ディスペンサーの話


接着剤などを定量塗布する時にディスペンサーを使うことが多い。
ディスペンサーにはいろいろな種類があるが、一番安価なタイプは空気圧と時間で制御するタイプ。
シリンジ(円筒管)の先端に注射針の様な管を取り付け、空気圧をかけて液を噴射する。
圧力とそれをかける時間で塗布量を制御する。

流れ学的に考察すると下記のようになる。

吐出部分の管の内径を2a(半径a)、長さをL。
流体にかける圧力をp1,出口の圧力をp2とする。
通常は大気圧の空間に放出されるので、p2は大気圧となる。

管内流の圧力勾配 Gは G=(p1-p2)/L
体積流量Qは Q=π*G/(8*μ)*a^4

と計算できる。
ここで、μは液体の粘度。

管内の速度分布uは、中心を0とし、半径方向にrとすると u=G/(4*μ)*(a^2-r^2) と表わされる。

中心は r=0 だから u=G/(4*μ)*a^2
管壁は r=a だから u=0

r以外は定数だから、定まる部分をA,Bとおくと u=A-B*r^2 つまり放物線。
管の中心の流速が一番速く、放物線を描いて、管壁では0になるという事が判る。

数式は判っても、代入する値の単位がわからず困る事がある。

SI単位系で解説すると、
まず圧力はパスカル:[Pa] これは [N/m^2]の事。
その時は、長さを表すr,a,Lは [m]にしなければならない。

一番こまるのは粘度。

この場合に必要な単位は [Pa・s]。
カタログなどはいろいろな単位で書かれているので、理屈はともかく [Pa・s] = 1 に相当する各単位の量を揚げると、

P = poise = ポアズ = pas = 10
cP= cps = センチポアズ = [mPa・s] = [mpas] = 1000
[kg・s/m2] = 0.101972

となる。
水の粘度は 1[mpas] なので 0.001[Pa・s]となる。
いやはやまったく、単位や表記を統一してほしいものだ。

硬いグリスが 50000とか80000[mpas]
ケチャップが 30000とか40000[mpas]
ソースあたりが 10000[mpas]くらいか・・・?

式をみれば明らかに流量は粘度に比例する。
また、シリンジにかける圧力と実際にノズル部分の管に作用する圧力は一致しない(損失が生ずる)から、なかなか計算と実測とは一致しない。

また、一般的には粘度は温度依存するので、液の種類によってはわずかに温度が変わっても吐出量に大きな差が生ずることがある。
ただ、理屈はともかく条件を定めればそれなりに安定するので、結局は微妙な部分は現物合わせにならざるを得ない。

自動機に組み込んだりするときは、人の監視下におけない場合も多いので、使い始めに空内などを追加して安定させる工夫などが必要になる。
また、液の管理や機器の清掃、シリンジの交換などけっこう手がかかるので注意が必要だろう。

意外と使うのに工夫がいる機器である。
この項完

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