レコーダーのペンを動かす、小さなステッピングモーターとギアユニットの組み合わせの部品を作っている。
500円硬貨ほどの小さな製品だ。
完成品のほこりを落とすために静電エアースプレーを使っていたが、お金がかかるので、静電除去エアーガンを購入して使い始めた。
ところが・・
50個に1個くらいの割合で歯車に水の様な液が付着する現象が見られるようになった。
で、その水みたいなものは乾かない様だ。
微量なので目視ではほとんど判らない、顕微鏡で歯車の傷やほこりをチェックしていて発見された。
まず疑ったのは工場圧空、ドライヤー不足かドレインの混入が考えられる。
普通の5μmのエアフィルターしか入れていなかったので、0.01μmのマイクロミストフィルタを入れる事にした。常識的な対応である。
ところが無くならない。
2017/11/29 18:00 作業現場の温湿度確認 気温23℃ 湿度58% だった。水ならば結露もあるのかもしれない。圧縮空気が断熱膨張することで温度が下がり結露するのではといったところだ。この室温空気の露点は10℃くらいなので、結露が無いとは言いきれない。
0.7Mpaの圧空を10℃で冷却すると飽和して露点10℃となる。その圧空は大気圧下では露点-18℃くらいになる。もしドライヤ不足になっていたとすると管内での結露は考えられる。ただしその場合はもっと大量に水が観察されると思われる。
だいたい、紙などに数分間吹き付けても何も異常がないので、何かがエアーガンから出てくるとは考えにくい。フィルターに汚れや液の溜まりなどは全くない、エアーガンを分解しても油分の痕跡などは全くない。
そもそも樹脂の歯車の特定の場所にのみ付着するのが不思議、結露だとすれば金属部分の方が先に濡れるはずである。樹脂に比べて金属の温度伝導率は30倍以上になる。
どうにも不可思議な現象で困ってしまった。
でも、静電エアースプレーでは起きない。同じような感じにするためにレギュレーターを効かせて噴射の勢いを抑えると液の付着は無くなる傾向にあることが解った。
でも悲しいことに噴射を抑えると、ほこりも飛ばない、何の為のエアブローなのかと悲しい気分になる。
製品のどこからか油が出てくるのではないかとか、モーターの油じゃないかとかと疑ったが、いくらエアーを吹き付けても何も起きなかった。
悶々としているうちに年を越した。
液が付着したものを正月休みの10日間ほど置いて於いたのだが、乾いていなかった、やはりこれは水では無い事が明らかになった。
工業試験場で分析しようと言う話になって、まずは相談するのには、なんとか写真に撮りたいねと現場の方といろいろと試していてハタと気が付いた。
モーターとギアユニットを連結しているM1.4のねじ・・・ネジロック。
1mmほどの板を抜けたネジ部が歯車の近くに露出している。
嫌気性のネジロックなので、露出している部分は乾かない・・・これか!!?
試しにエアーが当たらない様に注意したら液の付着は無くなった。
およそ不可思議な現象は、全て説明がついたのだった。
ほこりを飛ばす様な強さのエアーは、ネジロックも吹き飛ばして、それが歯車に付着したのだった。個体差があるのはネジロックの量と、ブローの微妙な向きの違いだった。
エアーガンは無罪。結露でも無かった。
まさに、幽霊の正体見たり枯れ尾花。
こんな感じですっきりと謎が解ける事はまれである。今年は縁起が良いかも。
この項完。
[2018.1.16]
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