ステンレスにはんだ付けの話


製品の完成検査で、コネクタと検査装置を繋ぐための冶具を作った。

線を加え込むタイプのコネクタにポゴピンで接するようになっていたのがオリジナルなのだが、接触の不具合があるとエラーになってしまった。

接続を確実なものとするために、コネクタ本来の使い方でφ0.8のステンレス線のコンタクトピンを挟み込めるように工夫した。


ステンレスのピンを使ったのは耐久性を考えたから。
ピンとケーブルの接続は、はんだ付け、鉛フリーでSUS304ステンレスに付けることが出来るフラックスのやに入り半田を入手した。

さて、外作で曲げてもらったピンに半田付けしようとしたがはじいてしまって、全くつかない。ステンレスは半田付けしずらいとは聞いていたが、それ用のはんだを使えば付くだろうと甘く考えていた。

ステンレスにもいろいろ種類がある、SUS304ならば付くはずなのだが・・
腰が強いようなのでばね鋼に近いのかもしれない。ひょっとしてSUS304ではないかも・・
いずれにしても、溶剤で拭いたり、磨いたりしても酸化膜が直ぐについてしまうのがステンレス、困ってしまった。
鉛フリーなのでこて温度は高めで短時間で済ますようにとのメーカー指導もあり、気を使ってやってみたが芳しくない。

ホームセンターでSUS304の線材を購入したが全くダメ。ミスミで購入してみた、こちらはなんとかくっついた、やれやれである。
どのステンレス線も聞いたところによると SUS304-WPB ばね鋼との回答だった。ただしホームセンターのものは他に比べ柔らく感じた。
 
ステンレス素線は、固溶化熱処理で 約1050°に加熱後急冷される、いわゆるひずみ取り。 ばね鋼の場合は さらに400℃前後で焼きなましが行われる、線材なのでBA等の仕上げ処理は行われていない様だ。
熱によって強力な酸化膜がついているのではないか?その度合いが、微妙に違うのではないかと思われる。

熱処理の回数ならば、なんとなく柔らかいホームセンターの素線はばね鋼では無いと考えると半田が付きそうなのだが、そうでは無かった。

そういえばSUS316の金メッキで、表面の仕上げがBA材はめっきが乗らず?がれてしまい、2B材はめっきが乗ると言う現象があった。素材にはさらに社内で不働態化処理を行っているのだが、BA材を使う方が熱処理が多く、酸化膜が厚いのではないかという推定である。 社内で不働態化処理をしなければ両方めっきが乗ったのである。

わかったようなわからない様な話だ。
ちなみに最初はゼムクリップのφ0.8線を使った、こちらは軟鋼にニッケルメッキ、ニッケルも半田付けにはあまり向かない様なのだが、良く付いた。


この項完 2017.5

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