私が係わっている製品は薄型の円筒形が多い。
でも形状精度は厳しい。真円、同軸10ミクロンが常。
加工そのものは加工機の精度と加工条件で決定されるが、
問題となるのはワークの固定。
スクロールチャックや油圧の生爪などでワークを掴むと必ず歪む。
加工後にワークを取り外すと歪みが解放されて、そのぶんだけ形状が変わる。
ミクロンオーダーで鉄を見ると豆腐と同じとよく言われる。
かなり厚肉に思われるワークでもクランプによる歪みは10ミクロン単位になる。
真円度10ミクロン以下と言われると、クランプによるワーク固定は難しい。
荒化工は別として、最終の仕上げ加工では、
ワークを如何に固定するかという話になる。
治具の平面とワークの平面を押し付け、
ワークにねじを加工しておいて引き込む固定、あるい外力による固定。
平らな面同士ならば、強く固定しても歪まないという理屈が成り立つ。
平らな面といっても研削に頼らず出来る面は10ミクロンよりやや小さいくらいのレベル。
それでも直接クランプする事に比べれば歪みは減る。
面の作り込みによって歪みを数ミクロンまで抑える事ができる。
他の方法としては、半径方向の力を周方向にほぼ均等に発生させて締め付ける。
すり割りを入れた部品をくさび状形状にしておき、
軸方向の力で半径方向へ広がるようにする。
通常は開くように作って、ワークの穴にはめ込むようにする。
ただし、はめあいになるので、そこそこの精度での勘合になることと、
ワークの穴の真円が極端に悪く、厚みが無いと、ワークに歪みが生じる場合がある。
今のところこの二つの何れかで固定しているが、他には方法が無いものだろうか?
加工技術や何軸もの加工機械が進化している昨今だが、
ワークの固定への言及は少ないように思える。
精密部品を設計する際、ワークを歪ませないように
加工できる形状を考えていただけると大変助かるのだが・・・。
この項完。
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