純金めっき装置をなんとか立ち上げた。
稼働を始めたのが 2014.6 いろいろとあったが半年が過ぎ、まあまあうまくいっている。
前項で取り上げた点状変色のめっき不良、これはどうやら前処理の不足だったらしい。
というのは、長い目でみると3か月周期で増えたり減ったりしていて、ちょうど前処理のアルカリ脱脂槽の建浴周期と一致してることに気が付いた。
建浴とは処理液を作り直す、あるいは液を調合し直す事を言う、つまり処理液の交換である。
アルカリ脱脂液の分析を一か月毎に行っていたが、そんなに汚れていない感じだったので、建浴周期を3か月としたのだが、考えてみると、正月明け、ゴールデンウィーク明け、夏休み明けというとちょっと長すぎるかもしれない。
そんな訳で 2015.4 より、月ごとに建浴するようにしたら不良が激減したのだった。
ところが夏に近づくにつれ不良が増えた、どうしようと言ってる間に秋に入ったら自然に減った、不思議である。
そしてまた年が明ける。めっき不良はそう多くなく安心した日々が続いた。
ところが、2016.6 大変なことに気が付いてしまった。
何機種かを代表にしてめっき膜厚のトレンドを取っているのだが、装置立ち上げからすこしづづ膜厚が低下しているのだ。
原因としては
めっき液の劣化
めっき時間が短くなっている
印加電流の低下
めっき電極の劣化
めっき冶具の異常(導通不足など)
と考え、液分析(ハルセル試験)、整流器の電流や印加時間、めっき電極の観察、冶具の整備を行ったが、何を見ても異常は無かった。
きつねにつままれたような不思議な話だ。
結局、めっき時間を伸ばすしか無いということで落ち着いた。
で、よくよく計算してみると今が正常で、昔は理論値より厚くめっきが付いていたということが判明、ますます不思議は増えるばかり。
ちなみに1価の金の陰極電流効率100%での析出するめっき厚T[μm]は、金属めっきの諸係数表から、めっき面積 S[dm2]、電流 I[A]、めっき時間t[min]とすると
T = 0.634・I/S・t と表される。
電流値と膜厚、めっき時間と膜厚は比例することになる。
I/Sは、電流密度1A/dm2 と呼ばれめっき液によって適正値を持っている。
理論的にこの式から算出される膜厚以上になる訳はないのである、のだが・・・
この項完。[2016.8]
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