軸受け(ベアリング)はスムーズな回転を作るものだが、微視的に見ると振れを持っている。
振れには2種類ある。
回転軸に垂直な方向の振れ、ラジアル振れ、芯振れ。
回転軸に平行な方向の振れ、アキシャル振れ、面振れ。
精度を必要とする回転体ではこの数ミクロンレベルの振れが問題になる。
今回は芯振れについて数式的に考えてみた。
芯振れを測定するには、ダイヤルゲージや、電気マイクロを当て、最大と最小の差(p−p)を読み取れば良い。
単純にこの方法だと、軸受けの振れと回転物体の形状も含む。
純粋に軸受け振れを測りたい時は、基準に出来る程度に丸い物体(真球マスターなど)を設置し、
かつ中心のずれをキャンセルさせるような工夫が必要だ。
回転軸に垂直に、中心から同じ位置に、90度の角度差で電気マイクロを当てて、リサージュを取る。
真円になれば振れはゼロ、変形した分が振れの大きさと考える測定法もある。
さて、
軸受けに固定された円筒が回転する形を考える。
芯振れ:回転中心と直角方向の振れを考察する。
振れは、軸受けの振れ+円筒の形状+軸受けの仮想中心と円筒部のずれが合成される。
X軸方向に円筒面の芯ずれ方向が一致する時を基準に考える、その時、反時計回りに角度とその時の仮想中心からの距離が、
客先面形状 R(k)
ベアリングの中心軌跡 Rb(k)
で規定されていると考える。
数値的に考えてみる。
X軸方向の変位を考える
この状態から反時計回りにθ回転した時の変位は
客先面の回転による変位 R(-θ)
芯ずれLによる変位 L・cosθ
中心軌跡による変位 Rb(θ)・cosθ
変位 F α=0 (θ)はこの3項の和となる
変位測定点が角度αの時は
客先面の回転による変位 R(α-θ) α=0 に対し位相がずれる
芯ずれLによる変位 L・cos(α-θ) αに対し投影(方向余弦)となる
中心軌跡による変位 Rb(θ)・cos(α-θ) αに対し投影(方向余弦)となる
変位 F α=α (θ)はこの3項の和となる
F(θ)= R(α-θ)+ L・cos(α-θ)+ Rb(θ)・cos(α-θ)
振れはmax-min(p-p)となるが、各項で考えると
p-p R(α-θ) 客先面の真円度
p-p L・cos(α-θ) 2*L 同軸度
p-p Rb(θ)・cos(α-θ) 起こりえる最大値は軸受け振れの大きさ
であるが、相殺する場合もあり得る
従って芯振れF(θ),p-p は
「客先面の真円度+同軸度+軸受け振れ」で起こりうる最大値が表せる。
面芯加工を行った場合を考える
芯ずれ以上に加工代を取れた場合はL=0となる
θ回転し、加工点をβとすると
客先面形状は R(-θ+β)=R-Rb(θ)・cos(β-θ) R:加工歯先位置
となる
位相のずれを考えると
R(-θ)=R-Rb(θ+β)・cos(2β-θ)
R(α-θ)=R-Rb(θ+β-α)・cos(2β-θ-α)
振れ測定を考え、先ほどの考察にL=0と面芯加工後のR形状を代入すると
変位測定点が角度αの時は
客先面の回転による変位 R(α-θ)=R-Rb(θ+β-α)・cos(2β-θ-α)
中心軌跡による変位 Rb(θ)・cos(α-θ)
変位 F(θ) α:測定点 β:加工点はこの2項の和となるから
F(θ)=R-Rb(θ+β-α)・cos(2β-θ-α)+Rb(θ)・cos(α-θ)
振れはmax-min(p-p)となる、各項で考えると
p-p Rb(θ+β-α)・cos(2β-θ-α) 固定分Rは消えるが、真円度=軸受け振れの大きさ
p-p Rb(θ)・cos(α-θ) 起こりえる最大値は軸受け振れの大きさ
α=βの時
客先面の回転による変位 R-Rb(θ)・cos(α-θ)
中心軌跡による変位 Rb(θ)・cos(α-θ)
となり、F(θ)=R 振れと形状が相殺する
また機会があたらもう少し突っ込んでみたいものだ。
この項完。[2011.5.6]
戻る