軸受け振れの話


回転体の芯振れ、面振れの話。

通常は回転体の出来栄えによる、振れ度が問題になるレベルだが、 10ミクロン以下の話となると軸受けの性能そのものが問題となる。
振れをどのように測るかというと、 通常は回転する面・円筒にピックを当てて、振れの最大を拾う。 軸受けの純粋な振れ(軸受け振れ)を見る場合は、 芯振れは真球、面振れはオプチカルフラットを回転部に置いて位置出しまたはチルティングする。
電気マイクロの値を見ながら軽く叩くなどして振れ零を目指すのだが、 どうしても取りきれない成分が軸受け振れと言われるものだ。
これがまた測定する位置によって異なるので始末が悪い。
。 数か所測定して最大値を採用する。90度ごと4点を取る事が多いが、振れの値が随分異なる場合も多い。 無限とは言わないが、複数点を測定しないと本当の最大振れは判らない。

面振れを見る場合はオプチカルフラット上に90度の位相差を持たせた2箇所の 電気マイクロのデータのリサージュを表示させ、 その形状と中心からの偏差幅で振れを判断する方法も取る事ある。振れが零ならば円形となる。
どちらの場合も波形から、 現実的にどのような動きをしているのか推測する事が出来ない。(少なくとも私には・・)
面振れの場合は中心からの距離によって振れの大きさは当然変わるので、 同じ測定径でないと比較できない。実験的にも、幾何学的にも、 中心の上下動に中心からの距離に比例する成分を乗せた形になるようだ。

製品として、面芯振れが規定されている場合、真球やオプチカルフラットをくっつける訳にはいかないので、 完成形で、回転させながら削って仕上げ、その面の振れを測定することになる。
ここで問題になるのは面振れの場合、目に見えない回転軸芯に対して加工した面が直角なのかという事。 直角が出ていないと振れは小さくなっても面としての平面度は出なくなる。鉛筆の頭かその逆の形になってしまう。
それを防ぐ為には、最初は回転部固定で非回転部を回して削る(ただし中央を逃がしたドーナツ面でないと駄目)。 その後、固定部を固定して回転部を削る。こうすれば回転部分の平面は確保できる。
いろいろなケースがあるが、回転部分もドーナツ形で、 広い面では無く、傾きが気にならない場合は、非回転部の仕上げは行わないで、直接加工しても良い。 ただし固定部との平行が必要な場合は、次に固定部を仕上げなければならない。 この場合は回転を伴う事を必ずしも必要としない。

わかりづらい文章で申し訳ないが、 いずれにしても、回転させて仕上げた面を基準にして他方を削らないといけない。 最初に仕上げた面は半径方向に傾斜を伴っている。という話。

さらに考察すると、回転させながら削った面は実は真円にも平面にもならず、 軸受け振れを相殺するような形になっている。
ただ、そうなるのは削りを入れる刃物がある場所での話で、他の位置では成立しない。
軸受けの面芯振れが規定値に入っていないと仕上げ加工で、 回転させながら削っても、最終的な振れを削った面で、削った位置以外で測定した時に基準値には入らない事もあり得る。
最悪の場合は、軸受けの面芯振れと削り形状が悪い方に重なると考えると、 軸受けの面芯振れの倍の値を取る事もあるわけだが、このあたりはどうも釈然としていない。
経験的に、軸受け振れと回転させて仕上げた面の振れは、 測定場所によらず、ほぼ1.5倍程度となる事が多い感じ。

この項完。

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