直角度とニゲ加工の顛末。
これは私が直接関わった訳ではないが、なかなか気付かない話なので紹介してみたい。
内側の直角が厳しい(?)部品があった。
(?)というのは、図面上で直角度の指定が無かったからだ。
でも、組み立てた時に相方の部品の直角と会わずに隙間ができてしまって、「これでいいの?」という話になった。
組み立て側と設計側で協議し、部品の直角は必要ですね。という結論となったらしい。
各々の面は平面度0.01mmという指定があり、三角三つとしてある。
直角の角は大きさは書いていないが逃げ加工をするように指示されている。
10年以上前に、仕上げ記号の三角は廃止され、直接面荒さを数字指定する方法になっているはずだが、
慣例として未だに通用するようである。三角三つとういうのは約7S、最大高さ7ミクロンの面荒さであり、
フライス加工で良い面と、図面を見た人は、通常思う訳である。
面荒さ7ミクロンで平面度10ミクロンとういうのは想像できる形状で、
なおかつ直角度は規定されていないから、フライス加工(エンドミル)で良いと考える。
図面指示で逃げを取れと書いてあるから、フライス加工で必要な逃げを考えると、そう大きくなくても良い。
この場合、直角の頂点を真下に固定して、幅1mmのメタルソーをかける事を選択したようだ。
でも、ワークが薄いとあまり幅を取れないから(幾何学的に)1mmという選択になったと思われる。
直角の角のニゲ加工とういのは現実にはけっこういやらしい。大きければ総形エンドミルで「ありみぞ」加工の様にできるかもしれない。
部品の直角が出てないので再加工となり、
直角度0.01mm(20mm×40mm程度のアングル面:でも長さは400mmくらい)ほしいと、再加工をお願いする事となったらしい。
加工屋さんとしては直角度0.01mmとなると研削を選択し、研削を行った。
ところが、直角の奥に削り残しが出来てしまった。直角の奥の逃げ加工が、研削砥石に対しては小さかった。
加工手段が変わると逃げの大きさも変わるという事だ。逃げは1mmのままで研削したという事だ。
面どうしの直角は三次元測定で検証してもOKなのだが、実際に部品を取り付けると削り残しがあたって隙間ができる。
削り残しの量は、長辺側で0.1mmくらいの隙間らしいから0.05mmくらいではないかと推定出来るが、
厳密に言うと平面度0.01mmは満たされていない事となる。
平研削で直角を出す場合、通常はワークを90度回転させて、1面づつ行うが、
ワークの取り付けによるずれを無視できるかどうかがポイント。
押し当てで出せる精度は0.005mmらしい。これは熟練の加工プロに聞いた話。
直角0.01mmと言われると、各々面加工で出せそうだが、
加工する対面(裏側)がきちんと出来ていないといけないから研削面としては4面削らないといけない、
なおかつ対面の平行度はこの場合0.01mmではアウトということだからと考えると難易度はUP。
もうひとつの方法は裏技的だが、砥石側面と底面で同時加工。当然ドレスは2面行い、
なおかつストレートではなく、やや末広がりの砥石を形成する。
これならば加工機の精度で直角が出せる期待が持てる。(あとは加工条件)
この加工屋さんがどちらの方法を取ったのか不明だが、
逃げ1mmでは砥石の角をそれ以下のシャープエッジにしなくてはならなかったのが、きっとできなかったのだろう。
これをもって加工ミスというのか図面指示不足というのか・・・
そもそも、部品どうしの組み合わせで隙間が出来たというのが発端で、
部品図的にはそのとおりだったのに、追加工のお願いをしたのだから、
部品の使用状況と加工の意図が十分に加工屋さんへ伝わっていなかったのではなかろうか?
部品図には必要な形状精度や公差が入る。その指示を見れば、どのように使われる部品か想像がつくものだ。
それが設計屋の指示であり意図であるわけだが、想像がつかないあるいは矛盾を感じる部品図の場合は
加工屋さんから問い合わせが来る場合もあり得る。
でも、そうできるのは熟練・こだわりを持つ加工屋さんで、それが図面を読むという事。
「図面どおりに加工しました。なにかいけませんか?」という加工屋さんがほとんど。
だから、図面屋は、誰が見ても客観的に解釈できる図面を書かなくてはならないし、
指示してなければ自分の意図と反した加工結果は甘んじて受けなければならない。
怪しいと感じる場合は加工屋さんと話をして図面を渡すべきである。
図面屋は加工工程を考えて、物理的に製作可能な図を描かなければならない。
「図面を読む。」「読んでもらう。」、最近わが社では「図面どおり」に作ろうという姿勢が多くなってきているが、
しっかりした図が供給されないと、とんでもない事になりそうな気がする。
製造が、設計屋と現場の共同作業で無くなるからだ。
「図面どおり作ったから製品が出来なかった。」よく聞く言葉である。
この項完。
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